1969.夏.冬 その後 ~ Pink Floyd (ピンク・フロイド)[3/3]
その一瞬の、わずか10秒位のタイトルのデザインやカメラの動きが、僕の脳の中のどこかに刻まれ、ピンク・フロイドというちょっと変わったロック・グループの名前や音や雰囲気は、永遠のものになった。
たった一瞬の“桃色”が他人の人生を大きく変えてしまう事もある、とその後何十年も経てつくづく思うし、1969年前後には、そんなシーンが他にもいくつかあったような気もする。
ピンク・フロイドは、その後、『原子心母/Atom Heart Mother』や『狂気/the Dark Side Of the Moon』等の傑作を生み、オーヴァーグラウンドに大きく浮上したし、バーベット・シュローダー監督も、ハリウッドに招かれ、『ルームメイト』のようなヒット映画を生んだ。
音への繊細さや構築力、映像の幻想感とそれを描く際の独特のシャープな癖のようなモノは、両者とも変わらず、押しも押されぬ大御所になった。
あの一瞬の“桃色”のタイトル・クレジットは、現在ではコンピューター・グラフィックスで簡単に模倣できるだろうが、あの何でもない一瞬のシーンを、かっこいいと訴え、メジャーに引き上げてしまう観客達の空気、つまり1969年の空気は、簡単には、コピーできないだろう。
あの空気は彷徨い、でも、今でも僕の脳の中には時々たち寄ってくれる。