1969.夏.冬 その後 ~ Pink Floyd (ピンク・フロイド)
2013.02.08
1969年の自分のカルチャー・ライフに限った範囲で思い起こせば、一番強烈な出来事は、 ウッドストックでもビートルズの崩壊でもローリング・ストーンズのオルタモントでも 東大闘争を伝える映像ニュースでもない。
この年、東京新宿のあまり大きくない映画館で観た映画『MORE』と出遭った事だったかもしれないと、この頃よく思うようになった。
ヨーロッパの小国ルクセンブルグ出身の全く無名の監督バーベット・シュローダーが撮ったほとんど無名の作品で、よく劇場公開されたものだと不思議に思っていたが、何十年も経った後、同年代の音楽プロデューサー/評論家に偶然聞いたところ、熱心な上映委員会が出来ていて、彼らの力で劇場公開にこぎつけたという。
委員会のメンバーは、渋谷や吉祥寺や下北沢で、ロック喫茶や古着屋や手作りの自然派製品のワークショップを営むいわゆる和製ヒッピー達や左翼活動家、アングラ劇団の演出家や俳優、得体の知れない人等で、つまり、ウッドストックに啓発されたような若者達だったという事のようだ。
同じ年に、『ロミオとジュリエット』という大ヒット映画があって、ヘンリー・マンシーニによる音楽を、各世代の人が鼻歌しながらバスや電車を待っている姿をいまだ覚えている程のモンスター級ヒット作。
それと比べると、超マイナーの、まさに知る人ぞ知る映画で、そういえば、吉祥寺のアーケード商店街で、インドの苦行僧のような和製ヒッピーに、『MORE』上映のチラシを手渡され“ほほー、ピンク・フロイドが音楽を担当しているのか…”と興味がわき、観に行く気になったのだった。
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