音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Stoned Days(ストーンした日々).Ⅱ :The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) [2/3]

 その時既に、ビートルズの世界的センセーションは浸透していたし、アニマルズやデイヴ・クラーク・ファイヴ、ハーマンズ・ハーミッツ等も結構な人気で、モップ頭の少人数のロックンロール・コンボを、ビートルズの出身地に因んで、ひとくくりに“リバプール・サウンズ”と、ラジオのDJ達は呼んでいた。

リバプール出身なんて、ビートルズとジェリー&ザ・ペイスメイカーズくらいしかいなかったが、その頃のイギリスの情報なんて皆無に等しかったから、AMラジオから、リバプール・サウンズ、という言葉が流れると、一気に血が騒いだものである。

そして、ローリング・ストーンズも“新しいリバプール・サウンズの5人組グループ! アメリカでヒット中のデビュー曲「テル・ミー」!”と声高に紹介されていた。


実際のところ・・・ストーンズは、ロンドン市中のブルース&ジャズの老舗クラブから出てきた都会っ子のバンドであったし、デビュー曲もチャック・ベリーのカヴァーである「Come On」。

「テル・ミー」は、大急ぎで作られたデビュー・アルバムの中の目立たない曲で、本国イギリスではシングル・カットもされていない・・・


だが、ミック・ジャガーとキース・リチャーズが作ったオリジナル曲であり、当時のアメリカのポップスの要素を取り入れた曲でもあった事から、アメリカのレコード会社の誰かの目にとまったのだろう。

アメリカのシングル・チャートでTOP40にかろうじて入り、それが日本に伝わって、ラジオでもかかり、電波障害のすき間を縫って、僕の耳に幸か不幸か届いたのである。