音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

Stoned Days(ストーンした日々).Ⅰ :The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) [2/2]

実際、ラジオの構成の仕事を始めた'75年以来、ストーンズの楽曲でオープニングする、というどうでもいい戒律めいたものを頑固に守って、どれだけの制作者とぶつかり、どれだけ仕事をおろされた事か・・・。

思い出すだけで、自分でも自嘲気味に笑ってしまう。

きっと、それ程ストーンズを好きで、ストーンズに思い入れがあるのだろう、と解釈するのが自然の事なのだろうが、それすら明確に自覚できない。

今回、こうしてストーンズについて筆を動かし、その自覚症状を確認しようと思った程、長い間の“ストーンズ症状”なのである。

 ストーンズの音を聴いた記憶や、ストーンズの記事を読んだ記憶等は、すぐさまフラッシュバックしてきて、もうそろそろ頭が怪しくなるこの年齢になっても、その古い時の光景や音や側に居た人の表情まで、まるで年表を開いた時のように甦ってくる。

ストーンズの記憶を定規のように使ってある事を思い出すと、その瞬間の他の事柄もついでに記憶が甦ってくる事が多いから、これは業(なりわい)を別にしても、とても便利な物差しだ。

 多くの友人は、口を揃えて「そんなに記憶しているのは、やはり、ストーンズを好きなんだよ」と、愛好の度合に直結して言う。

 確かに、その通りかもしれない。

だが、十代の時代から、そんな風に考えた事すら無かった。

いつの間にか、音楽の他の事も、周辺の人や出来事も、ストーンズと結びつけて記憶する習慣が身についてしまっている・・・

いささか気味の悪いその習慣を、この際、もう少し掘り下げてみようと、ひょっとしたら最後の来日になるかもしれない2014年に思った。(次回へ続く