音楽評論家 大伴良則の音楽のまんよう

左回りの時計 ~ Enigma(エニグマ)

2010.06.27


 エニグマの4作目のアルバム『ザ・スクリーン・ビハインド・ザ・ミラー』は、 ちょうど新世紀を迎えるとかコンピュータの2000年問題などが世の話題だった2000年1月初めに発表された。

エニグマは、その約10年前の1990年初頭に、グレゴリオ聖歌とラップ、クラブ・ダンス・ビートとを融合させた 「サッドネス」 という曲が、全世界のヒット・チャートを征服し、宗教歌のちょっとしたブームを巻き起こすとともに、ヒーリング・ミュージックのブームの草分け的存在にもなったドイツのプロジェクトである。


後に判った事だが、プロジェクトの中心人物は、ハンガリー出身の元クラシック・ピアニストで、旧西ドイツ時代、アラベスクやヒューバート・カーといったドイツのポップ・スターをプロデュースしていたマイケル・クレトゥという男…

そして、グレゴリオ聖歌を素材にするというアイデアは、レコーディング・スタッフとして長く一緒にやっていたフランク・ピーターソンからのものだった。

ピーターソンは、その後、サラ・ブライトマンのプロデューサーとして大成して、むしろ師匠のクレトゥ以上に有名になる…


いずれにしろ、初期のエニグマというプロジェクトは、優秀なプロデューサー集団であったという事だ。


ザ・スクリーン・ビハインド・ザ・ミラー